ニュースリリース

2011年3月8日

顕微鏡撮影用スーパー超高感度カラービデオカメラ(NC-R550b)で
世界初・受精の先体反応観測に成功!

 この度、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 広橋教貴研究チームは、五藤光学研究所から販売している「顕微鏡撮影用スーパー超高感度カラーカメラ(NC-R550b)」を使ってマウス受精の顕微鏡観察<ライブイメージングシステム:注釈1>を行い、これまで考えられてきた定説を覆す発見をし、その研究成果が米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)に発表されました。

 広橋博士らが使用した顕微鏡撮影用スーパー超高感度カラーカメラ(NC-R550b)は、電子増倍機能を備えたEM-CCD(荷電結合素子)を採用し、超高感度性能を有すほか、3板式であることから、光の3原色RGBのうち特定の色の感度設定ができ、超微弱な光源の中でもリアルタイム動画でカラー観察できるカメラです。

 マウス受精の顕微鏡観察は、我々が本来見ることのできない体内環境で起こる受精プロセス(精子の卵への接近、先体反応<注釈2>の誘起、卵への膜融合の一連の過程)を顕微鏡下で再現し、どのように精子が卵へ進入するかを明らかにすることを目的としたもので、研究成果は将来、不妊治療などに役立つことが期待されます。

 卵に接近する多数の精子のうち受精に至るものはわずか1細胞であり、この受精する精子を捉えることはこれまで困難とされてきました。さらに、従来のカラーカメラの感度では微弱な蛍光を捉えられなかったため、通常モノクロカメラが使用されており、2色以上のイメージングでのリアルタイム観測は行なわれていませんでした。
そこで同研究チームは精子頭部が緑色蛍光、中片ミトコンドリアが赤色蛍光を発する遺伝子改変精子(写真1)を用い、さらに明視野・暗視野の高速変換装置を開発し、接近するすべての精子をNC-R550bによって動画記録し、受精した精子の軌跡を逆再生する手法で解析を行いました。
今回、NC-R550bで得られた映像を詳細に解析した結果、精子が卵を覆う細胞層(卵丘細胞)を通過し、細胞外マトリックス(透明帯)に進入し卵と融合するという過程の中で、精子が卵透明帯に接着する以前に精子先体反応を既に誘起していることが判明しました。これは従来考えられてきた受精プロセスの定説(すなわち、精子は卵透明帯に接着した後、先体反応を起こす)に反するものです。この観察結果は、従来の定説に基づいて構築されてきた受精の分子メカニズムの研究にも大きく影響を及ぼし、今後ほ乳類の生殖機構を理解する上で重要な発見と位置づけられています。

関連画像・動画

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<注釈1> ライブイメージング
生体内や細胞内で起こっている分子レベルの生体反応を蛍光(あるいは発光)分子の変化を観察することで生きたまま測定する手法。使われる蛍光分子は低分子化合物からオワンクラゲ由来の緑色蛍光蛋白質まで多種にわたり、導入方法も多様である。

<注釈2> 先体反応
ヒトをはじめとする多くの動物精子で見られる受精に必須な反応。精子が卵に接近すると、精子頭部先端にある先体胞と呼ばれる小胞体が卵側の何らかの刺激によって崩壊し、先体胞の内容物を放出し、さらに先体胞の内側の膜を露出する。内容物は、卵をガードしている保護層に穴を開ける作用があり、精子はその穴を通過した後、卵細胞膜と融合し、受精が成立すると考えられている。すなわち先体反応とは精子と卵が出合うぎりぎりのところで起こる「一生に一度きり」の生理現象であり、そのメカニズムの解明は生殖研究上の重要課題の1つである。